



AGA基礎知識
#AGA基礎知識
男性の薄毛の大きな原因とされるAGA(男性型脱毛症)。
「若いのに髪が薄くなってきた」「額の生え際や頭頂部が気になる」という悩みを抱える方は、AGAが関係しているかもしれません。
AGAは男性ホルモンと遺伝的要因が絡み合うことで発症し、放置すると進行性の脱毛を引き起こしますが、早期発見と適切な治療によって薄毛の進行を抑制したり、改善したりすることが可能です。
今回の記事では、AGAのメカニズムから最新の治療法まで、薄毛に悩む方に向けて科学的根拠に基づいた情報を徹底解説します。
あなたの髪の悩みを解決するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
最近、抜け毛が増えたり、生え際や頭頂部の薄さが気になったりしていませんか?
それはAGA(男性型脱毛症)の兆候かもしれません。
AGAは成人男性の約30%が経験する一般的な症状で、20代でも発症する可能性があります。
ここでは、AGAを含めた薄毛の原因について解説します。自分の薄毛パターンを知り、早期に適切な対策を取ることが重要です。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」によると、AGAと遺伝は関係していることが分かっています。
AGAと遺伝が密接な関係にある理由には、X染色体上に存在する男性ホルモン受容体遺伝子(AR遺伝子)の多型が関係しています。
遺伝子の多型とは、人口の1%以上に見られて、単独では重大な病気を引き起こさない変異のことです。
この遺伝子多型によって男性ホルモン受容体の活動性が増加すると考えられています。
母親側のX染色体が男性に引き継がれるため、母親の家系に薄毛の男性がいると、自身も薄毛になる可能性が高いといえます。
両親が薄毛ではないのに自分が薄毛になっているという場合には、隔世遺伝の可能性が考えられるでしょう。
ただし、AR遺伝子の多型が見られても全員がAGAになるわけではありません。
また家族研究では、AGAの息子の父親は81.5%がAGAであることが示されています。
したがって、ほかの常染色体遺伝子もAGAの発症に関係していると考えられます。
参考記事:AGA 遺伝子検査ってどんな検査?内容や費用について詳しく解説
AGAは遺伝以外にも、男性ホルモンも関係します。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは本来、骨・筋肉の発達を促したり、ひげや胸毛などの毛を濃くしたりと男性らしい体を作る役割を担います。
しかし、テストステロンがII型5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、薄毛につながります。
DHTが頭皮の毛包にある男性ホルモン受容体に結合すると、毛母細胞の増殖が抑制されるため髪の毛の成長がストップしますが、その後すぐに休止期といって髪の毛が抜ける時期に入ってしまうのです。
ただしこのメカニズムが存在しても、すべての例で薄毛になるわけではありません。
まだ研究段階ですが、男性ホルモン受容体の増加、男性ホルモン受容体の機能的多型、DHTの局所的産生の増加および局所的分解の減少などが関係しているといった説もあります。
男性ホルモン受容体は頭頂部と前頭部に多くあることから、AGAでは前髪の生え際と頭頂部が薄くなる傾向があるのです。
参考記事:5αリダクターゼとは?AGAの原因物質とその働きを抜け毛のメカニズムから解説
薄毛の発症は生活習慣も関係しており、特に食事、運動、睡眠は薄毛の原因となります。
食事においては糖質や脂質の多い食事、塩分過多、カフェインのとりすぎが原因に挙げられています。
糖質や脂質の多い食事をとり続けると、血行に乗って頭皮に糖分や脂質が運ばれるため、頭皮のべたつきにつながり、頭皮環境が悪化して薄毛になりやすくなるのです。
また塩分の多い食事をとり続けると、血液がドロドロになって十分な栄養が運べなくなり、こちらも頭皮環境を悪化させる原因です。
さらに、カフェインはアデノシンを破壊するといわれています。
アデノシンは毛髪を成長させる毛乳頭に直接作用し、発毛促進因子であるFGF-7の産生量を高めて発毛を促進するため、アデノシンが破壊されると発毛がなかなか進まず、薄毛を助長すると考えられています。
一方で睡眠は、髪の成長のために非常に大切です。
髪が健康的に成長するには成長ホルモンが必須ですが、睡眠が不足して成長ホルモンが十分に分泌されないと、薄毛を助長すると考えられているのです。
加えて、運動不足になると血流が悪くなるため薄毛が進行しやすくなります。
栄養が十分にとれていない、栄養バランスが乱れている場合にも薄毛になりやすいです。
髪の成長にはタンパク質、シスチン、亜鉛、ビタミンが必要です。
どの栄養も十分にとれていない場合や偏りがある場合には、髪の成長が阻害されるため、健康な髪が生えてこず薄毛になるリスクが高まります。
病気の治療で服用している治療薬の中には、副作用で薄毛を発症させるものもあります。
代表的な薬剤が抗がん剤です。
抗がん剤は細胞分裂を阻害して、がんの治療をするお薬のため、髪の毛の毛母細胞の働きも抑制します。
そのため、服用開始から1~2週間の早い時期から脱毛が始まり、薄毛になるのです。
ほかにも高血圧の治療薬、抗うつ薬、抗凝固薬は脱毛を引き起こすことが考えられていますが、発症頻度は低いといわれています。
頭皮環境が悪いことも薄毛の要因となります。
例えば、頭皮がべたついているとマラセチアという頭皮の常在細菌が異常増殖して脂漏性皮膚炎となり、この状態を放置することで頭皮環境が悪化して薄毛の原因となるのです。
ほかにも皮脂が過剰に分泌されると、頭皮の毛穴が詰まりやすくなり、髪の毛の成長を阻害して抜けやすくなります。
特に、皮脂成分に中性脂肪ともいわれるトリグリセリドの割合が高いと、トリグリセリドの割合が低い皮脂よりも粘り気が強くなるため、毛穴も詰まりやすくなります。
また、頭皮が乾燥していると毛穴に慢性的な炎症が起こるため、こちらも薄毛の要因です。
そのため、頭皮はべたつきすぎず、乾燥しすぎないようにケアしておくことが必要です。
薄毛は原因によって治療法が異なります。
生活習慣、薬、栄養不足、頭皮環境などが要因の場合、要因を取り除けば大抵の薄毛は改善するでしょう。
しかし、AGAは治療が必要です。
ここからは、AGA治療法と治療効果について詳しく解説します。
AGAの治療は科学的に効果が実証されています。
フィナステリドやミノキシジルなどの薬剤は、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨され、適切に継続すれば多くの患者さんで進行抑制や発毛効果が認められています。
ただし、個人差があり効果が現れるまで半年程度かかることも。早期治療ほど効果が高く、継続することで維持できますが、中断すると元に戻る可能性があります。
信頼できる医療機関での適切な治療が鍵です。
実は近年、若ハゲが増加傾向にあります。
若ハゲとは、医療用語で若年性脱毛症といい、10代や20代前半など本来薄毛になることが少ない年齢で薄毛になってしまう進行性の脱毛症です。
20代でAGAになる方は10%程度ですが、AGA以外の要因も含めるともう少し多いことが推測されています。
AGAやFAGAは遺伝的要因とホルモンが関係する進行性の脱毛であり、セルフケアだけでは効果に限りがあります。
また、中程度以上の円形脱毛症や瘢痕性脱毛症も専門治療が必要です。
これらの症状では頭皮や毛根の状態が特殊で、市販品では有効成分の濃度や種類が十分でないため、医師の診断に基づく処方薬や治療法が不可欠となります。
適切な対処には、早期の専門医受診が重要です。
AGA治療で使用される主な内服薬はフィナステリドと、デュタステリドです。
これらは男性型脱毛症の原因となるDHTの生成を抑制する5α還元酵素阻害薬で、国内でもAGA治療薬として正式に承認されています。
一方、ミノキシジル内服薬は血管拡張作用により頭皮の血行を促進し発毛を促す薬剤ですが、日本ではAGA治療薬としての内服薬は未承認です。
これら3種類の薬剤はそれぞれ特徴や効果、副作用が異なるため、自分に合った薬剤を医師と相談して選ぶことが重要です。今回はこの3つの内服薬について詳しく解説します。
フィナステリド錠(先発品名プロペシア)は、テストステロンの還元酵素である5αリダクターゼII型を阻害して薄毛を予防します。
ガイドラインによると、服用開始後48週間で0.2mg/日で54%、1mg/日で58%の方に軽度改善効果が見られており、さらに2年間または3年間の内服継続によって、それぞれ68%と78%の方に軽度改善以上の効果が見られています。
継続して服用すれば、約半数以上の方の薄毛改善が認められているのです。
特に、40歳未満の若年者や薄毛の重症度が低い場合にはより高い効果があることが分かっています。
デュタステリド(先発品名ザガーロ)は、フィナステリドと同じく5αリダクターゼの活動を阻害しますが、デュタステリドはI型とII型どちらの5α還元酵素も阻害できます。
5αリダクターゼI型は側頭部や後頭部を中心に、5αリダクターゼII型は生え際や前頭部、頭頂部を中心に多く存在しているといわれているため、髪全体の薄毛が気になる方には高い改善効果が期待できるでしょう。
発毛効果はフィナステリドよりも1.6倍あるといわれており、外部専門家による写真評価でも26週の服用において頭頂部は81%、前頭部も76%の改善効果が報告されています。
ミノキシジルの内服薬をミノキシジルタブレットといい、世間ではミノタブとも呼ばれています。
これまで紹介してきた薬は抜け毛を予防していくものでしたが、ミノキシジルタブレットは発毛を促進する内服薬です。
ミノキシジルは、一般的にはAGA診療ガイドラインにのっとり外用薬が使用されていますが、一部のクリニックではミノキシジルタブレットの処方も可能です。
ミノキシジルタブレットはガイドラインにおいて推奨度がDとされているため、日本での積極的な治療効果判定はされていません。
しかし、知識と使用経験の豊富な専門医の判断のもとで適切に使用すれば、AGA治療でより高い効果を発揮できます。
ミノキシジルについては以下の記事でも詳しく紹介しています。
服薬と同様にAGA治療における推奨度が高いのが外用薬です。
外用薬は頭皮に直接塗布するため、内服薬と比べて全身への影響が少なく、副作用のリスクを抑えながら発毛効果を期待できるという特徴があります。
また、内服薬と併用することでより高い効果が期待できるケースも多いでしょう。
ここからは、代表的な外用薬を2種類解説します。
ミノキシジルは世界的にもAGA治療の第一選択肢として使用されており、日本でも医薬品として承認されています。
最低3カ月の使用が推奨されており、3カ月を過ぎた頃に少しずつ効果が出てきます。
94%の方に発毛・育毛効果が実証されており、薄毛改善の高い効果が期待されています。
カルプロニウム塩化物(アロビックス)も薄毛治療に使用される外用薬です。
カルブロニウム塩化物には血管拡張作用があるため、さまざまな皮膚領域の治療に使われていますが、AGAにおいては頭皮に塗ることで血流を促進させ、薄毛の改善を目指します。
また、アロビックスは副作用が起こる可能性が非常に低いため、副作用が気になるという方も安心して使い続けられるでしょう。
AGAは、放置すれば確実に進行していく疾患です。
AGAの症状は個人差がありますが、早く治療を始めるほど効果的に進行を抑制でき、現状維持や改善が可能になります。
「様子を見よう」という判断が症状悪化を招くため、少しでも気になる変化があれば、専門医への相談をためらわないことが重要です。
AGAは一度始まると自然に治ることはなく、徐々に進行していく疾患です。
男性ホルモンの一種であるDHTが毛根に作用し、毛髪の成長期間を短くしていくことで、髪の毛は次第に細く短くなり、抜け落ちてしまいます。
進行速度には個人差がありますが、時間とともに症状が悪化する特性があるため注意が必要です。
AGAの治療は「早ければ早いほど効果的」というのが医学的な定説です。
これは、髪の毛が失われた状態からの回復は難しく、残っている髪の毛を守るほうが容易だからです。
AGAの初期段階では生きている毛根がまだ多く残っており、治療によって健康な状態に戻せる可能性が高くなります。
また、早期治療では薄毛の進行を止められるだけでなく、失われつつある髪の密度を回復できる可能性も高まります。
治療を中断または終了してしまうと、また薄毛が再開します。そのため、AGA治療の期間に上限はなく、完治して治療をすべてストップできるというわけではありません。
ただし、医師の判断によってある程度髪が生えそろったタイミングから、薬を減量していくことはあります。
薬を生涯飲み続けるのは難しいという方は、医師と相談しながら治療の終了のタイミングや減薬のタイミングを検討しましょう。
AGA治療は保険が適用されず、全額自費診療です。そのため、治療費用がネックになる方も多いでしょう。
ここからはAGA治療の費用について詳しく解説します。
AGA治療にかかる費用の内訳は初診料、再診料、検査料、薬剤料です。
初診料の相場は5,000円程度です。しかし、クリニックによっては治療を受けることを条件に無料になるケースもあるため、診療の際に確認しておきましょう。
再診料は3,000~4,000円程度で、初診以外の診察でかかります。
検査料は5,000~10,000円程度が相場ですが、検査料もクリニックによっては治療を受けるという条件で無料になるケースもあります。一方で、オンライン診療のクリニックではそもそも検査ができないので検査料はかかりません。
薬剤料は選択する薬剤によって異なります。内服薬の費用相場は8,000~10,000円程度、外用薬は10,000~15,000円程度です。フィナステリドなどのジェネリック医薬品の場合は、この半額程度で治療が受けられます。
AGA治療は前述したように自費診療となるため、クリニックによって費用に差があります。これは、皮膚科でもAGA治療専門クリニックでも同様です。
ただし、AGA治療専門クリニックにおいては、AGAの治療に効果があると考えられるほかの治療を導入しているケースがあります。
さまざまな治療を並行して行うことから、より多くの費用がかかることもありますが、高い費用対効果を得られることも少なくありません。
費用面のみならず効果も併せて検討しましょう。
薄毛になる原因はさまざまあります。原因を解消することで薄毛が改善することもありますが、多くの場合には治療が必要です。
また、治療をせずにAGAを改善するのは非常に困難です。
AGAの治療には内服薬や外用薬を使ったさまざまな治療法があるため、医師に相談した上で自身にぴったりな治療法を見つけましょう。
AGAの治療は、専門的かつ多様な治療法を選べるAGA専門クリニックで進めるのがおすすめです。
薄毛が気になる場合、まずはAGA専門クリニックを受診してみましょう。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。