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#AGA基礎知識
髪の毛が抜けた際に白い塊が付着しているのを見たことがある方はいるでしょうか。
これは毛根鞘と呼ばれるもので、髪の健やかな成長において大切な働きをする部分です。
本記事では、毛根鞘の概要、抜くためのコツなどを解説していきます。
毛根鞘について気になる方や抜けた際の対処法が分からないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
毛根鞘という言葉は、なかなか聞きなれないこともあり、毛根鞘がそもそも何なのか知らない方もいるでしょう。
まずは毛根鞘とは何なのか、どのような役割があるのかなどについて、その概要を詳しく解説していきます。
毛根鞘とは、毛根の周囲にある半透明のゼリー状の組織です。
主な役割は、髪の毛を頭皮に固定したり、外部刺激から守ったりするもので、髪の毛を頭皮にくっつける接着剤の役割であると考えると分かりやすいでしょう。
毛根鞘は「内毛根鞘」「外毛根鞘」から構成されているもので、触るとプルプルとしており、弾力がありつつも柔らかく、冷たい触感であることが特徴です。
外毛根鞘とは、毛根鞘の皮膚側と接している箇所で、もっとも外側にある部分のことです。
皮膚と髪の毛をつなぐ糊のような働きをしているため、外毛根鞘はプルプルとした弾力を持っています。
また通常の表皮とは異なる角化様式をしており、外毛根鞘のような質感を外毛根鞘性角化と呼びます。
加えて、内毛根鞘を外側から支えている部分でもあり、髪の毛の成長に必要な栄養素を毛根の細胞へ供給しています。
内毛根鞘とは、外毛根鞘の内側に存在している部分で、鞘小皮・Huxley層・Henle層の3つから構成されています。
外毛根鞘と違って毛根側と接している部分であり、髪の外層にあるキューティクルと噛み合うように付着しています。
中でも髪の毛の外側である毛小皮は、内毛根鞘と絡み合い、髪を保護する役割を担っています。
髪の毛の成長に直接関係する部分のため、髪のキューティクルや癖、太さなどはすべて内毛根鞘が影響しているのです。
ここまで、抜けた髪に付いている白いものは毛根鞘であると説明してきましたが、実は皮脂である可能性もあります。
毛根鞘と皮脂は一見すると似ているため、違いが分からない方も多いかもしれませんが、これらの大きな違いは触感にあります。
毛根鞘は触るとプルプルと弾力がある一方で、皮脂は触るとベタベタとしています。
また、皮脂は文字通り脂なので、夏場などの暑い時期では溶けて見えなくなっていることもあります。
そのため、夏場よりも冬場になると毛根鞘に付いた皮脂が多く見られる傾向にあるのです。
毛根鞘に抜け毛が付いていることにより、不安になる方もいるかもしれません。
ここからは、抜け毛に付着した毛根鞘が持つ意味や、毛根鞘が付いていても大丈夫なのかどうか、抜け毛に毛根鞘が付いていることで考えられる事象を解説していきます。
大前提として、毛根鞘が抜け毛に付いていてもまったく問題ありません。むしろ毛根鞘が付いている抜け毛が通常の抜け毛です。
髪は成長が終わると自然に抜けて、新しい髪の毛が形成されます。
毛根鞘は髪の成長のために栄養を与えたり、髪を守ったりするので、髪の成長が終われば、役割を果たした毛根鞘も抜け落ちるのが一般的です。
中には、毛根鞘が付着せずに抜け落ちることもありますが、少量であれば問題ありません。
毛根鞘に血が付いていた場合は、毛穴や毛根に傷がついている可能性があるため、注意が必要です。
毛穴や毛根は、誤ったブラッシング方法や寝具との摩擦により、傷がつくことがあります。
また、髪の毛を力いっぱい引っ張って引き抜いた場合にも血が付着することがあります。
傷がある状態で放置したり、傷が悪化したりすると、傷口から雑菌が入って炎症を起こすかもしれません。
炎症を起こすと痛みや腫れが生じてしまい、最終的に髪の成長へ影響を及ぼします。
そのため、毛根鞘に血が付いていたら、洗髪をして頭皮の清潔を保ち、様子を見てみましょう。
毛根鞘に血がつき続けている、痛みや腫れなどの症状が出ているという場合は速やかに医療機関へ相談しましょう。
必ずしも抜け毛に毛根鞘が付いているわけではありません。
しかし、抜け毛に付いていない毛根鞘はかなり少ないとされているため、多くの抜け毛に毛根鞘が付いていない場合には、AGAの可能性が考えられます。
AGAについての詳細は後述しますが、髪が十分に成長していない状態で抜けるため、毛根鞘が取れてしまうのです。
毛根鞘が取れてしまうと、再びその部分から髪の毛が生えてくることはないのではと心配になる方もいるかもしれません。
髪の成長に関係しているのは毛乳頭と毛母細胞です。
そのため、この二つが毛穴の中に残っている限り、髪はまた生えてきます。
前述したように、毛根鞘が付いていない抜け毛は、AGAが原因で抜け落ちている可能性が極めて高いといえます。
AGAによって髪が十分に成長しないまま抜け落ちると、毛根鞘は付かないのです。
ここからはAGAがどのような状態なのかを詳しく解説していきます。
毛根鞘が付いていない抜け毛が多数見られている方は、AGAの可能性を疑いながら、ぜひ次の内容をチェックしてみてください。
AGAとは男性型脱毛症とも呼ばれ、はじめは多少の抜け毛が見られるのみですが、放置していると最終的に薄毛になってしまう病気です。
男性ホルモンのテストテロンがII型5α還元酵素によってジヒドロテストステロンに変換され、毛母細胞に存在する受容体に結合すると、髪の毛の成長を妨げることができます。
通常、髪の毛は成長期、退行期、休止期を経て抜け落ち、この流れをヘアサイクルと言います。
AGAは上記のメカニズムにより、ヘアサイクルが乱れるため、髪が十分に成長できずに抜け落ちるのです。
十分に成長できていないことから、毛根鞘が付着せずに抜け落ちてしまいます。
AGAによる抜け毛の特徴は、主に2つあります。
まずは、前頭部と頭頂部を中心に抜け毛が見られる点です。
ジヒドロテストステロンの受容体は、前頭部と頭頂部に多いとされています。
そのため、生え際が後退してきた、つむじあたりが薄くなってきたという場合には、AGAによる抜け毛の可能性が極めて高いといえます。
もう一つは、髪の成長が不十分な状態で抜けていることです。
抜けた髪を見てみると自然に抜けた髪と比べて細く、コシが無く、短い髪の毛が多い傾向にあります。
これはAGAによって髪の毛が十分に成長できなかったためです。
もしも抜け毛が上記の特徴に当てはまっている場合には、AGAを疑っても良いでしょう。
AGAを放置していても、自然と改善することはありません。
AGAを改善するためには治療を受ける必要があります。
AGA治療として最も推奨されているのが、内服薬や外用薬を用いた治療です。
内服薬は5α還元酵素に作用して、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換することを防ぎ、脱毛を予防します。
一方の外用薬は、毛髪が薄くなった部分に直接塗布することで髪の成長を促します。
実際にこれらの治療により、多くの方が抜け毛や薄毛を改善できたという報告があります。
ただし、AGA治療薬は市販されていないため、病院で処方してもらわなければなりません。
薬にはさまざまな種類があるため、自身に合った薬はどれなのか、AGA専門の医療機関を受診して医師へ相談しましょう。
毛根鞘ではなく、皮脂が付着している場合でも「様子を見ていれば何とかなるのでは?」と考えて放置する人は少なくありません。
しかし、毛根鞘ではなく皮脂が付着していた場合、このままで良いと思わずにケアすることも必要です。
ここからは、抜け毛に皮脂が付着している場合の対処法を解説していきます。
皮脂が付いているということは、十分に頭皮の汚れを落とせていないという証拠です。
以下の2点に注意しながら、シャンプーの方法を見直してみましょう。
一つ目は洗い方です。
ゴシゴシとこすりながら洗ったり、シャンプーをたっぷりと直接頭皮につけたりしては、正しく洗えていません。
まずは、ぬるま湯のみで髪と頭皮を洗い、シャンプーを少量のお湯と混ぜてしっかりと泡立てます。
泡は頭皮ではなく髪につけ、指の腹を使いながら、頭皮をやさしくもみほぐすようなイメージで洗いましょう。
二つ目はシャンプーの選び方です。
刺激の強いシャンプーや洗浄力の高いシャンプーは、かえって頭皮を乾燥させて皮脂を増やします。
しかしながら、頭皮の皮脂が多い人が洗浄力の少ないシャンプーを使っても、十分に汚れを落とすことはできません。
そのため、アミノ酸系シャンプーといった合成界面活性剤が含まれておらず、保湿力の高いシャンプーがおすすめです。 シャンプーは、ご自身の頭皮に合ったものを使いましょう。
正しい方法でシャンプーを行うことに加え、シャンプー中に頭皮マッサージをするのもおすすめです。
また、中にはシャンプー後に自然乾燥させる方もいますが、自然乾燥は頭皮の環境を悪化させるため、必ずドライヤーを使って髪と頭皮を乾かしましょう。
他にも紫外線による乾燥は頭皮の皮脂を増やすので、帽子を被ったり、日傘をさしたりして、髪と頭皮を守ることも大切です。
頭皮の皮脂分泌には、日頃の食事も関係しています。
普段から脂質の多い食事をしている方は、食事から摂取した脂が頭皮の毛穴からも排出されるため、頭皮の皮脂量が増えます。
ケーキやスナック菓子、ジャンクフードなど、脂質を多く含む食べ物は極力避けましょう。
一方、頭皮によい栄養素もあります。
ビタミンB群には皮脂をコントロールする働きがあり、ビタミンCには皮脂の過剰分泌を抑える働きがあります。
また、ビタミンAには新陳代謝を促す役割があるため、これらのビタミンを積極的に摂ることも、頭皮の皮脂分泌を改善する上で効果的でしょう。
一見、皮脂と関係がないように思える睡眠ですが、実は睡眠不足が皮脂量を増加させます。
睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が減少し、新陳代謝が低下して頭皮が乾燥しやすくなるため、乾燥を改善させようと皮脂の分泌量が増えてしまうのです。
また、睡眠不足によって交感神経が優位の状態が長く続くことで、皮脂の分泌量が増えるとも考えられています。
早寝早起きを心掛け、就寝前のブルーライトが出る機器の使用は控えましょう。
ストレスを受けている状態だと、交感神経が優位となるため、皮膚が乾燥して皮脂を過剰に分泌させます。
また、ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂の過剰分泌をきたします。
ストレスがたまるとニキビができやすくなるのは、この皮脂の過剰分泌が原因なのです。
自身に合ったリフレッシュ方法でストレスはため込まないように、こまめに発散して過ごすと良いでしょう。
人によっては、毛根鞘を意図的に抜いてしまうという方もいます。
毛根鞘を抜きたくなる場合は抜毛症(トリコロマチア)という病気の可能性があり、治療が必要になるケースもあります。
トリコチロマニアとはどのような病気か、以下で解説していきます。
トリコチロマニアとは、ご自身の毛髪を引き抜いてしまう強迫症に関連した精神疾患のことで、髪の毛を抜くことから抜毛症とも呼ばれている病気です。
毛であればどの毛でも引き抜いてしまうため、髪の毛以外にも眉毛やまつ毛を引き抜くこともあります。
中には引き抜いた毛に毛根鞘がないかどうか探したり、毛根鞘が付いていることに執着したりします。
また、毛根鞘を食べる人もいますが、髪の毛と毛根鞘を食べることで毛髪胃石が形成され、腸閉塞などの消化器疾患を合併させるケースもあるのです。
人口の約1%の方がトリコチロマニアであるとされており、特に女性が多い傾向にあります。
トリコチロマニア(抜毛症)の原因は、遺伝と環境要因が関係しているという考え方もありますが、現時点でははっきりとした原因は不明とされています。
ただしトリコチロマニア(抜毛症)患者には特徴があります。
内向的・生真面目・我慢強い性格の方が多い点です。
このような性格を持つ方は、ストレスやネガティブな感情から上手に回避することができず、回避行動の一つとして毛を抜いていることが考えられています。
また刺激的欲求を満たして、不安を軽くするために行っているケースもあります。
自身でトリコチロマニアを治したり行動を制限したりすることもできますが、ほとんどのケースにおいて一度おさまったとしても再発します。
トリコチロマニア(抜毛症)は、その症状や発症した背景に合わせた治療を行う必要があります。
一つ目の治療は薬物療法です。
落ち込みやうつ状態を併発している場合には、抗うつ薬の服用で症状が軽くなったり、改善したりするケースが多いです。
治療法の二つ目は認知行動療法で、トリコチロマニアに対してもっとも多く行われている治療方法となります。
専門医の指導で毛を抜いてしまう原因を探りながら、毛を抜かないで過ごすためにはどうすれば良いのかを見つけて、症状の改善を目指しましょう。
トリコチロマニア(抜毛症)は、放置しておいて治ることもあったり、症状が一旦落ち着いたりすることもありますが、すぐに再発するケースが多いです。
そのため、精神科や心療内科の医師に相談して適切な治療を受けることが望ましいです。
特にトリコチロマニアの方は、自身の行動が異常だと思っていてもやめられなかったり、周囲の人に言うのが恥ずかしくて病院に行けなかったりするケースもあります。
しかし、治療をしなければどんどん髪の毛を抜いてしまい、結果的に薄毛へとつながります。
家族や信頼できる人に付き添ってもらいながらでも良いので、できる限り早い段階で医療機関を受診しましょう。
毛根鞘は髪に栄養を与える部分ですが、髪に栄養を与え終わると髪の毛と一緒に抜け落ちます。
そのため、抜け毛に毛根鞘が付いていることは異常ではありません。
しかし、毛根鞘ではなく皮脂が付いている場合は頭皮の環境が悪くなっている証拠なので、日常生活や頭皮ケアに着目して治す必要があります。
また、自身で毛根鞘が付いている髪の毛を無理矢理抜いたり、毛根鞘を食べたりするトリコチロマニアという病気もあります。
この病気の場合は髪を抜きすぎて薄毛につながったり、髪を食べることで消化器に異常をきたしたりする可能性があるため、そのような場合は医療機関の受診をおすすめします。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。