AGA基礎知識
#AGA基礎知識
薄毛には遺伝が関係しており、80%程度は遺伝によるものといわれています。
そのため、家系の中に薄毛の方がいる場合、自身にもAGAの遺伝子があるのか、将来薄毛になるのか気になる方も多いかもしれません。
そこで本記事では、AGAの遺伝子検査の特徴や信憑性をご紹介していきます。
AGA検査の費用や検査方法についても詳しく解説していくため、AGAの遺伝子検査を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
AGA遺伝子検査とは、AGA(男性型脱毛症)を進行させる男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)の感受性を調べる検査です。
アンドロゲンレセプター遺伝子解析検査とも呼ばれており、医療機関によって検査の呼び方が若干異なる場合もあります。
AGAの多くは、遺伝によって発症することが分かっています。
AGAを発症させる要因のうち、遺伝が強く関係しているのは、男性ホルモンのテストステロンをジヒドロテストステロンに変換させる還元酵素の活性度と、毛根細胞にあるアンドロゲン受容体(アンドロゲンレセプター)の感受性です。
アンドロゲン受容体の感受性に関与する遺伝子は「アンドロゲン受容体遺伝子(AR 遺伝子)」と呼ばれています。
またAR遺伝子には、決まったDNA塩基配列が繰り返される領域があります。
CAGとGGCという塩基配列が繰り返される領域の長さで、男性ホルモンに対する感受性の予測が可能なのです。
そして、AR遺伝子の多型により、CAGとGGCの塩基配列が繰り返される領域の長さが短い人は、AGAが発症しやすいことが分かっています。
多型とは、集団の1%以上に見られる遺伝子の変化であり、変異は1%未満に見られる場合のことです。
AGA遺伝子検査を受けると、現在ご自身に起こっている薄毛の原因がAGAなのかが分かります。
特に進行した薄毛の場合、見た目のみでは何が原因で薄毛が起こっているのか判断しづらいケースもあり、誤った診断によって適切な治療を行えないと改善は見込めません。
つまり、AGA遺伝子検査で薄毛の原因を知ることにより、ご自身の薄毛に合った治療を早期に開始できるのです。
遺伝子検査があるとはいえ、どれほど信頼できるのか分からないと、不安に思う方もいるでしょう。
AGA遺伝子検査の信ぴょう性については、疑う声が多い一方で、その効果を称賛する声も多く、具体的な割合は不明であるのが現状です。
また、AGA遺伝子検査は白人に対しての研究結果は豊富にありますが、アジア人に対しての研究データは乏しく、信ぴょう性の低い一因だと推測されます。
ただし、白人よりもアジア人の方がAGAを発症する確率が低いことから、人種によっては遺伝子検査の高い効果が期待できるかもしれません。
AGA遺伝子検査にも限界があり、検査結果の正確度(感度・特異度を含む)は100%ではありません。
しかし、AGA遺伝子検査に限らず、どの検査でも100%の正確度はありえません。
現在の研究では、AGAに関する遺伝子すべてを網羅的に調べることは不可能に近いためです。
中には、陽性の結果はAGAを発症する確率(感度)が70%であることを示し、陰性の結果はAGAを発症しない確率(特異度)が70%であることを示すといった報告もあります。
AGAは遺伝だけでなく、環境的な要因もあります。
遺伝的要因は低かったとしても、生活習慣が乱れていたり、薄毛を発症させるリスクの高いことをしていたりすれば、遺伝子検査と異なる結果になるかもしれません。
あらかじめ、遺伝子検査に100%の正確度はないという点を理解しておきましょう。
AGA遺伝子検査をする、あるいはまず自身の頭皮の様子を調べてもらいたいという場合には、クリニック診察がおすすめです。
近年はオンラインクリニックなど、医療機関を直接受診しなくても治療や検査ができる仕組みが整いつつあります。
一方クリニック診察ならば、医師が対面で診察を行い、直接頭皮をチェックしてもらえるため、頭皮の環境を専門家の目で診てもらえます。
また、問診でご自身の生活習慣も把握してもらえるので、外的要因も分かるでしょう。
AGA遺伝子検査を始め細かい部分まで診察・検査をしてもらえることから、クリニックでの診察がおすすめです。
ここからは、AGA検査の具体的な方法について詳しく解説していきます。
AGA遺伝子検査は、主にクリニックをはじめとした医療機関を受診して行いますが、一部自宅での検査も可能です。
遺伝子検査の方法としてもっとも多いのが、クリニックなどの病院で検査を受ける方法です。
医師が丁寧に検査を行ってくれること、ご自身の希望する検査を追加でできる点がメリットです。
病院では、主に次の二つの検査が行えます。
注射針で血液を採取する検査ですが、採取する血液量は約2mlと非常に少量です。
血液検査で分かることは、AR遺伝子の遺伝子配列のみであることから、5αリダクターゼの活性度に関わる遺伝子を調べることはできません。
採血時に注射針を刺すため痛みはありますが、血液量も2mlと少量なので、貧血を起こすといった体への負担はほとんどありません。
また血液を調べていることもあり、ほかの検査と比較して信憑性が高い点が特徴です。
すでにAGA治療薬を服用中の方においては、薬の効果判定を一緒にしたり、AGAのリスクにもなる脂質異常なども一緒にチェックできたりするため、これらをチェックしたい方は検査医に相談してみましょう。
なお、遺伝子検査の結果が出るまで1カ月程度かかります。
毛髪検査とは、髪の毛を少量抜き取って行う検査です。
血液検査と同じく、AR遺伝子の遺伝子配列を調べるもので、毛髪検査の結果が出るまでには1カ月程度かかります。
血液検査よりも信ぴょう性が低くなる可能性がありますが、注射をする必要がないため、注射が苦手、針が怖いという方にはおすすめの検査方法です。
また、少量の髪の毛を使う毛髪検査にはミネラル検査もあります。
ミネラル検査とは、髪の毛に含まれるミネラル量を調べるもので、髪に必要な栄養がしっかりと行き届いているのかどうかをチェックできます。
血液検査での感知が難しい微量ミネラルも調べられるため、髪に必要なミネラルがしっかりと送られているか知りたい方は、遺伝子検査と併せて行っても良いでしょう。
医療機関を受診する時間がない、自宅の近くにAGA遺伝子検査ができる医療機関がないという場合には、AGA遺伝子検査キットを使うという方法もあります。
遺伝子キットを申し込むと、検査キットが郵送されてくるため、キットの説明書をもとに毛髪や血液、唾液、口内の粘膜などを採取し、返送するだけで検査は完了です。
検査結果が出るまでには最短で2週間、長くて2カ月程度かかります。
なお、キットを使う場合は検査のみなので、検査結果を踏まえたその後についてのお話はありません。
また、毛髪の状態や頭皮の状態も見ていないため、遺伝以外に要因がないかどうかのチェックもありません。
検査キットは個人での取り寄せとなるため、キットの提供源が信頼できない会社であった場合には、費用を払ったのに正しい検査結果が得られない可能性もあります。
検査キットによる検査を受ける前には、ご自身で信頼できる会社かどうかを調べる必要があるのです。
AGA遺伝子検査はどのくらいの費用がかかるのか気になる方もいるでしょう。
しかし、AGA遺伝子検査は自費診療のため、クリニックによって費用が異なります。加えて、最新の検査であることから、ほかの検査よりも高額になるケースもあります。
ここからは、AGA遺伝子検査の費用感について解説していきますが、医療機関によって相場が異なるため、あくまで参考程度にとどめていただき、検査を受ける医療機関へご確認ください。
病院で遺伝子検査を受ける場合の相場は、1万5,000円~3万円程度です。
病院の診察を受ける場合には初診料がかかりますが、初診料を含めて3万円程度に抑えているクリニックが多い傾向にあります。
初診料がかかるクリニックでは、遺伝子検査の費用は1万5,000円~2万円程度となりますが、初診料がかからないクリニックでは、検査費用が3万円程度と高額になるケースがあります。
ほかにも、病院の診察を受けた際にその場で検査を追加できるため、最終的に支払額が想定より高額になる可能性もゼロではありません。
検査キットを使う場合の費用相場は、1万円~2万円前後です。
検査キットにはスワブ式と唾液式があり、スワブ式は口腔内の粘膜をこすり取って検査する方法で、スワブ式だと1万円~1万5,000円程度かかります。
一方で、唾液を容器に入れて検査をする唾液式では2万円前後になるケースが多いです。
毛髪による検査では、検査キットを使用しないこともあり、7,000円~1万円と安価で検査が可能な傾向にあります。
AGA遺伝子検査を受ける上では、いくつか注意しておくべき点もあります。
あらかじめ、検査を受ける前に注意点を押さえておきましょう。
遺伝子検査は受けたら終了ではなく、その後の対応が非常に重要です。
検査の結果、AGAになる可能性がある、あるいは現在の薄毛がAGAによるものと診断された場合には、早めの対応が推奨されます。
せっかくリスクや結果について理解をしたのに、治療をせずに放置すれば、その間にも薄毛はさらに進行していきます。
進行した薄毛を元の状態に戻すことは極めて難しく、時間も費用もかかります。
検査後に遺伝による薄毛と診断されることも想定し、治療を開始できるように環境を整えてから検査を行うとよいでしょう。
まだ薄毛ではないが遺伝的にリスクがあると診断された方は、日常生活を見直すなど、セルフケアを行うと薄毛の予防になります。
AGA遺伝子検査は、費用が高ければ信ぴょう性も高い、費用が安いから信用できないということではありません。
費用だけでなく検査の精度など、総合的にチェックしてから検査方法を選びましょう。
血液検査は、一般的にどの検査においても精度が高いとされています。
また、毛髪検査も病院で受けるものについては、信ぴょう性が高いとされています。
一方で検査キットについては、費用自体は病院よりも安いところが多いです。
しかし、キットを扱う企業が無名だったり、評判が低かったりすると、検査制度が著しく低いことも考えられるため、企業の知名度や口コミのチェックが必要です。
さまざまな情報をチェックし、費用や精度などを総合的に判断した上で選びましょう。
前述したように、AGA遺伝子検査に限らず、すべての検査において100%という数字はあり得ません。
そのため、検査では遺伝の可能性がないと結果が出た場合でも、薄毛になることがあります。
これは検査が誤っていたわけではなく、もともと検査で検知できない場合があるということです。
このように、費用を払って検査をしても、確実な結果が得られるわけではない点は理解しておきましょう。
反対に、検査精度100%を謳う医療機関は、信用できないと考えてもよいでしょう。
AGAにかかる治療や検査は、命に直結するリスクが低いことから保険適用外となっており、同じくAGA遺伝子検査も保険適用外となります。
保険適用外の場合、医療機関ごとに費用を設定できるため、費用が異なる場合も多いです。
また、治療も保険適用外のため、検査を受けてから治療を受けるとなると、高額な費用が必要になるかもしれません。
検査を受ける際は、その後の治療も見越した上で費用計画を立てましょう。
AGA遺伝子検査について興味が出たけれど、具体的にどのようなことが分かるのか知りたいという方もいるでしょう。
AGA遺伝子検査では、主に以下のことが分かります。
AGA遺伝子検査では、ご自身の薄毛がAGAによるものか、ほかの原因によるものなのかがある程度分かります。
薄毛にはAGA以外にも、円形脱毛症や脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症など、さまざまな種類がありますが、これらはすべて原因も治療方法も異なります。
そのため、AGAが原因であるにもかかわらず、ほかの治療をしていては改善効果が見込めません。
AGAかどうかは、一般的に問診を行い、家族にAGAがいるかを聞き取ったり、AGA好発部位が薄毛になっているかどうかチェックしたりします。医師によっては、ダーモスコピーや拡大鏡で頭皮を調べる場合もあります。
しかし、これだけではAGAの判断は難しいため、AGAの確定診断をしたい場合には、遺伝子検査が有効です。
AGAの治療薬は、もちろんAGAでなければ効果を発揮しません。
また治療薬を使っていても、その治療薬が効いているかどうかは効果が出なければ判定できません。
そこで、AGA遺伝子検査を行うことで、治療効果が見込めるかどうかをチェックできます。
具体的な内容は次のとおりです。
AGA遺伝子検査では、アンドロゲン受容体の感受性に関係するAR遺伝子について調べます。
もしもAGAの原因がアンドロゲン受容体の感受性増加であった場合には、抗アンドロゲン薬に高い効果が期待できます。
中には、5αリダクターゼ遺伝子を検査している施設もあるようです。
AGAの原因が5αリダクターゼ活性度の増加の場合には、5α還元酵素阻害薬の使用が望ましいです。
このように、AGAの原因を知っておけばより有効な薬剤が使用できるため、高い改善効果が得られるでしょう。
治療薬は多く使えばいいというわけではなく、それぞれに最適な量があります。
遺伝子検査では、薬剤の代謝に関わる遺伝子の解析も同時に行うことができ、薬物代謝酵素の活性を予測し、最適な投薬量を決定することが可能です。
薬には当然ながら副作用もありますが、投薬量を最適化することで、不要な副作用を被る心配もありません。
体に負担をかけずに治療をしたいという方にとって、AGA遺伝子検査は非常に有用な検査といえるのです。
現時点では薄毛ではない方も、AGA遺伝子検査をすると、将来AGAを発症するリスクがあるかどうかが分かります。
特に20~30代ではAGAを発症するかどうか分からず、AGAの発症者が増えるのは概ね40代からです。
先に検査をして発症リスクを知っておけば、症状が出たらすぐに治療ができるでしょう。
また、セルフケアなどの今からできる対策も講じれるため、発症のタイミングを遅らせることもできるかもしれません。
最後に、AGA遺伝子検査についてよくある質問をまとめました。
AGA遺伝子検査に関する疑問をここで解消しておきましょう。
検査自体は毛髪を採取したり、採血をしたりするだけなので時間はかからず、5分程度で済むケースが多いです。
ただし、問診や視診、スコープを活用した頭皮のチェックなど、AGA遺伝子検査以外の検査を行うと30分ほど時間がかかるケースがあります。
検査結果は最短2週間、最長2カ月、平均すると約1カ月で結果が出ます。
病院で検査をした場合、専門の検査機関に血液や毛髪を送って検査をしてもらいます。
そのため、郵送の関係から、この平均期間を前後することもあるでしょう。
AGA遺伝子検査は唾液や毛髪、口腔粘膜や血液の検査のため、検査を受けても母体や胎児への影響はありません。
そのため、どの妊娠週数でも検査は可能です。
また、遺伝情報は生涯変わることがありませんので、妊娠中でも検査結果は変わりません。
ただし、AGA遺伝子検査は男性を対象としたもので、妊娠の有無にかかわらず女性は検査ができないことがあります。
遺伝子は時間が経つことで変わるものではないため、いつすればよいという具体的な期間はありません。
そのため、自身が検査を受けたいというタイミングで検査をするのが一番適切なタイミングです。
AGA遺伝子検査は最新の治療であり、まだ認知度も低い上に実施している医療機関も少ないのが現状です。
しかし、早い段階でAGA遺伝子検査を受けて、AGAの原因を知っておくと速やかに対策ができます。
特に家系に薄毛の方がいる場合は、一度AGA遺伝子検査をご検討ください。
また、AGA遺伝子検査は自費診療となるため、費用が高額となる傾向にあり、医療機関以外が検査をしている場合は、信ぴょう性が担保できないケースもあります。
そのため、できる限りAGA遺伝子検査をしているクリニックを受診し、医師と相談しながら検査を進めていきましょう。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。