AGA治療薬プロペシアの副作用について解説

AGA治療では、主に内服薬と外用薬を使って治療を行います。

本記事では内服薬の一つであるプロペシアについて、作用と副作用、使用時の注意点、副作用出現時の対応など、服用にあたって知っておくべき内容について解説します。

AGA治療薬のプロペシアをこれから使用する方、「すでに使用しているけれど、副作用の認識があいまい」という方はぜひ本記事を参考にしてみてください。

目次

    AGAと治療法について

    まずは、AGAとはどのような状態のことを指すのか、AGAではプロペシア以外にどのような治療法があるのかについて解説します。

    AGAとは

    髪の毛には本来、成長期、退行期、休止期という3つの時期があり、このサイクルを経て髪が生えて抜けていきます。

    成長期は2~6年、退行期は2~3週間、休止期は3~4カ月と設定されており、このサイクルが正常に送れていれば薄毛になることはありません。

    AGAとは、髪の成長期が短縮された結果、上記のサイクルが乱れ、髪が本来抜けるタイミングよりも早く抜けるため薄毛になる状態のことです。

    AGAは、原因に男性ホルモンの一種であるテストステロンが関係しているため、男性型脱毛症と呼ばれています。

    本来、テストステロンは男性特有のごつごつとした骨格や筋肉の発達を促したり、髭や胸毛などを濃くしたりする役割があります。しかし、このテストステロンが5αリダクターゼによってジヒドロテストステロンに変換されると、薄毛の原因となります。

    成長が止まった髪の毛は退行期へと移行し、やがて抜けてしまいます。

    治療法紹介

    AGA治療は第一選択として内服薬と外用薬の使用が優先されます。

    特に内服薬は治療の優先度が高く設定されているため、多くの医療機関で第一選択薬として採用されています。一方で、外用薬は外用薬単体で使用するケースもありますが、内服薬と併せて使用するケースが多いです。

    さらに、内服薬と外用薬ともに効果が不十分だった場合には、植毛やLED光治療といった治療も検討されます。

    ここからは、これらの治療法について詳しく解説します。

    内服薬・外用薬

    飲み薬や塗り薬を使って行う治療です。

    内服薬で主に使われるのは、プロペシアをはじめとするフィナステリドを主成分とした薬と、ザガーロをはじめとするデュタステリドを主成分とした薬です。内服薬では、テストステロンをジヒドロテストステロンに変える5αリダクターゼを阻害することで、脱毛を抑制します。

    一方で、外用薬は頭皮に直接塗って使用します。主に発毛を促進する効果があり、24週間薬剤を使用した300名の男性を対象として観察した研究の結果、脱毛部に5%ミノキシジル液を使用した場合、1cm²内に平均26.4本の発毛が確認されており、発毛剤として高い効果が期待されています。

    また、ミノキシジルは同成分配合のものが市販化されている点も特徴です。

    ただし、成分の配合量などが異なるため、処方薬と市販薬のどちらが自身に対して効果があるのかについては、医師へ相談してみましょう。

    このように、内服薬と外用薬ではそれぞれ期待できる効果が異なるため、両方の効果を享受できるように内服薬と外用薬を一緒に使用するケースも多いです。

    植毛

    植毛とは髪の毛を直接頭皮へ植え付ける治療法です。

    一般的に内服薬や外用薬治療が優先されるため、植毛はこれらの治療をしてもまったく効果がなかった場合に行われます。

    自身の毛を頭皮に植え付ける自毛植毛は、日本での治療が認められており、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」においても82.5%と高い生着率が示されています。

    一方で人工毛の植毛は、アレルギーのリスクや生着率の低さから、日本ではほとんど行われていません。また、人工毛の植毛自体が世界的に見ても治療者数が少ないため、医療機関によっては受けられないこともあります。

    LED光治療

    LED光療法とは、高輝度LEDの光を頭皮に当てて毛乳頭細胞の活性化を促し、発毛を促進する治療です。

    薄毛治療に用いられる赤色LEDは波長が長いため、頭皮の奥まで光が当たりやすい上に、毛の発育に必要な成長因子であるHGFやLeptin、VEGF-Aといった物質の濃度を上昇させることが確認されています。

    さらに、LED治療は週に数回20分間光を当てるのみと、短時間かつ人体へ負担をかけずに治療できることもあり、患者様の負担が少ない点も特徴です。

    プロペシアの脱毛抑制効果

    プロペシアは脱毛抑制効果が期待できる治療法です。

    ここからはプロペシアの脱毛抑制効果について詳しく解説します。

    脱毛抑制効果

    プロペシアはフィナステリドを主成分とした薬剤で、脱毛抑制効果が期待できます。

    プロペシアがテストステロンの還元酵素である5αリダクターゼII型を阻害すると、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されにくくなるため、毛乳頭細胞への影響が減るのです。

    このメカニズムによって、脱落する毛髪の量を減らし、ヘアサイクルを整えた結果として薄毛を予防できます。

    プロペシアとプロペシアジェネリックの違い

    プロペシアは先発医薬品であり、ジェネリック医薬品としてフィナステリド錠があります。

    これらの違いについて気になる方もいるでしょう。ここからはプロペシアとプロペシアジェネリックの違いについて詳しく解説します。

    プロペシア

    プロペシアは先発薬のため、効果に対する公的な研究データが存在します。

    臨床成績として、プロペシアを服用開始してから48週間後に、0.2mg投与群で54%、1mg投与群で58%の軽度改善効果が示されています。さらに2年間または3年間の内服継続によって、軽度改善以上の効果がそれぞれ68%と78%の方に見られました。

    特に、40歳未満の方や重症度が低い方においては、より高い効果が現れました。つまり、若い方や軽度のAGAの方は、プロペシア服用により高い改善効果が期待できるのです。

    ただし、プロペシアの効果を発現させるためには通常6カ月の継続服用が必要とされているため、確実に効果を得たい方は少なくとも6カ月は継続してプロペシアを服用しましょう。

    プロペシアジェネリック

    プロペシアジェネリックとして市場に流通しているのは、フィナステリド錠と呼ばれる薬剤です。

    前述したように、プロペシアは先発薬のため効果に対する公的な研究データが存在しますが、フィナステリド錠は後発薬品となるため、公的な研究データはありません。

    しかし、プロペシアもフィナステリド錠も、主成分はフィナステリドです。主成分が同じであることから、同様の効果が期待できるといえます。

    とはいえフィナステリド錠は薬価が安い分、研究データが乏しいため、プロペシアと同等の効果が出るという確約はない点を押さえておきましょう。

    プロペシアの副作用と服用時の注意点

    プロペシアは薬剤のため、効果だけでなく副作用があります。副作用や注意点も理解した上で、治療を受けるかどうかを検討しましょう。

    副作用

    プロペシアの主な副作用は性機能障害、肝機能障害、アレルギーの3つです。

    副作用について、ここから詳しく解説します。

    性機能障害

    プロペシアの副作用としてもっとも頻度が高いのが性機能障害です。

    性機能障害の内訳には勃起機能不全、射精障害、精液量減少、リビドー減退があります。

    この中でもっとも発症頻度が高いのがリビドー減退(1~5%未満)です。リビドー減退とは性欲が減退することで、プロペシアは男性ホルモンの働きを抑制するため、性欲が減退しやすいとされています。

    また、リビドー減退、勃起機能不全、射精障害については、プロペシアの服用を中止した後も副作用が続いていたという報告があります。

    ある程度副作用が続くことから、例えば妊活をしている場合には妊孕性(にんようせい)が低くなり、夫婦関係に影響を及ぼすことがあるかもしれません。

    肝機能障害

    プロペシアをはじめ、ほとんどの薬が肝臓で代謝されて排泄されます。

    そのため、薬による肝機能障害はプロペシアのみならず、多くの薬剤で起こり得る可能性が高いとされているのです。

    肝機能障害はプロペシアの重大副作用とされています。プロペシア服用後に倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹などが現れた場合には肝機能障害の可能性があるため、服用を中止して医師に相談しましょう。

    アレルギー

    肝機能障害と同様に、多くの薬剤ではアレルギーが起こる可能性があります。プロペシアを服用することで、かゆみ、発疹が起こることがあります。

    発症頻度は不明となっていますが、もしこれらの症状が出た場合にはアレルギーを疑い、服用をいったん中断することが望ましいでしょう。

    また、プロペシアには有効成分のフィナステリド以外にもさまざまな添加物が含まれています。そのため、アレルギー体質の方は、自身がアレルギーを発症する原因物質がフィナステリドに含まれていないかを確認してから服用しましょう。

    注意点

    ここからは、プロペシアを服用する際に注意すべき点について解説します。

    継続的に飲み続けないといけない

    プロペシアは一度飲めばいい薬剤ではありません。

    ガイドラインにおいては、少なくとも6カ月の継続服用が推奨されています。

    また、ガイドラインの経過観察をしたデータにおいても1~2年間服用を継続しているため、長期スパンで服用を継続する必要があるという点は押さえておきましょう。

    加えて、継続的に服用するということは、お薬代がかさみます。薬代が払えなくなり治療を中断することも少なくないため、継続的に飲み続けることを理解した上で予算を立てましょう。

    初期脱毛の恐れ

    プロペシアを服用することで、初期脱毛が起こる可能性がある点を理解しておきましょう。

    初期脱毛とは、プロペシア服用開始1~3カ月後に起こる脱毛のことです。これはプロペシアの服用によりヘアサイクルが正常化し始めることで起こります。

    プロペシアを服用すると毛母細胞が活発化することで、休止期に入って細く弱くなっていた髪の毛が、新たに成長した髪の毛によって外に押し出されて抜けるのです。

    初期脱毛は個人差があり、まったく起こらない方もいます。しかし、休止期にある髪の毛が多いほど、初期脱毛で抜ける髪の毛の量は多くなります。

    脱毛が起こると「悪化している」「薬が効いていない」と心配して服用をやめる方がいますが、初期脱毛が起こっているということは薬が効いている証拠です。

    そのため、自己判断で中断せずに服用を続けましょう。

    効果に時間がかかる

    プロペシアには即効性が認められていません。

    人によっては3カ月程度で効果が出るケースもありますが、6カ月ほど服用を継続しなければ効果が出てこないことが通常です。

    効果が出るまでに時間がかかるということを十分に理解した上で、長い目で治療を継続していく必要があります。

    女性の使用は非推奨

    プロペシアは女性への使用が非推奨となっています。

    ガイドラインにおいても、女性への使用はD(行うべきではない)とされています。同時に、女性のAGAにおいてプロペシアの有効性は確認されなかったという報告もあります。

    そのため、女性にはプロペシアは処方されません。

    プロペシアは男性専用の内服治療薬?

    上述したように、プロペシアは女性への使用が非推奨となっています。

    これはプロペシアの作用機序や女性に対する影響が要因ですが、ここからはプロペシアが男性専用の内服治療薬である理由を解説します。

    作用機序

    プロペシアは5αリダクターゼII型を選択的に抑制することにより、男性ホルモンであるテストステロンをジヒドロテストステロンに変換するのを阻害する薬剤です。

    女性が服用してはいけない理由

    女性がプロペシアを服用してはならない最たる理由は、妊娠していた場合に胎児に影響を及ぼす可能性があるためです。

    プロペシアは服用した場合はもちろん、粉砕・破損したプロペシアに触れただけでも、成分が体内に吸収される可能性があります。妊娠している女性がプロペシアの成分を吸収した際、おなかの中の胎児が男児だった場合に、男性器の性状発育へ影響を及ぼす可能性が示唆されているのです。

    したがって、妊婦または妊娠している可能性のある女性および授乳中の女性は、プロペシアの内服が禁忌です。可能な限り、触れるのも避けるべきでしょう

    プロペシアが女性に与える影響

    女性のAGAに対しては、プロペシアを投与しても効果が期待できません。

    それは、男女でAGAの根本的な原因が異なるためで、女性のAGAは主に女性ホルモンの乱れやストレス、全身疾患などが原因です。

    実際に、海外で実施された閉経後女性の男性型脱毛症137例を対象とした12カ月間の比較試験において、フィナステリドの有効性は認められませんでした。

    さらに、副作用として肝機能障害やアレルギー障害は男性と同様に見られると考えられます。

    効果が期待できないにもかかわらず副作用のリスクがあることから、女性はプロペシアを服用すべきではありません。

    副作用出現時の対応

    プロペシアの服用中に副作用が出た場合にはしかるべき対応を取ることが重要です。対応できなかった場合、時に命に関わるケースもあります。

    副作用が出現したら次のように対処しましょう。

    服用の中止

    プロペシアを服用したらアレルギーの症状が出た、肝機能障害が出たという場合には、すぐに服用を中止しましょう。

    性機能障害については、自身に性機能症状が出ているのか分からないケースもあるため、すぐに中止をしなくても問題ありません。

    しかし、アレルギー症状や肝機能障害は命に関わるリスクもあるため、すぐに服用を中止しましょう。

    また、プロペシアとの因果関係は不明とされていますが、自殺念慮、自殺企図、自殺既遂が報告されているため、これらの症状が出た場合にも服用を中止しましょう。

    専門医に相談

    副作用症状が出た場合には服用を中止するだけでなく、必ず医師に相談しましょう。プロペシアを処方した専門医が最善です。

    もし重篤な副作用が起こっていた場合、早期発見、早期治療が重要となります。

    また、プロペシアを用法・用量を守って服用したにもかかわらず副作用が生じ、さらに健康被害が出た場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象となります。この場合、給付請求をすれば救済給付を受けられ、治療費が支給されます。

    給付のためには医師の診断が必要です。そのため必ず専門医に相談しましょう。

    まとめ

    AGAの治療薬として推奨されているプロペシアには副作用もあります。

    プロペシアの副作用は性機能障害、肝機能障害、アレルギー症状です。もしこれらの症状が出現した場合には、速やかに服用を中止して医師へ相談しましょう。

    また、プロペシアは少なくとも6カ月服用しなければ効果が期待できません。

    副作用が出た場合は使用を中断し、出ていない場合には6カ月服用して経過観察していきましょう。

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