人はストレスを受けると自律神経系、内分泌系(ホルモン)、免疫系などを介して何かしらのストレスサインが現れますが、その影響の一つとして抜け毛が生じる可能性があります。
自律神経には身体を緊張させる「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」があり、この2つがバランス良く機能することで心身の健康が保たれています。しかし、人はストレスを感じると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位な状態になります。すると、毛細血管の収縮が起こり血流が低下してしまいます。
私たちの髪の毛を健やかに成長させるために欠かせない栄養は、血液を通して頭皮まで運ばれます。そのため頭皮の血流が悪くなると栄養供給が滞り、髪の毛の成長を妨げ抜け毛が起こる可能性があるといわれています。
また、女性の場合は髪の毛のハリやコシを保つために女性ホルモンである「エストロゲン」が欠かせませんが、ストレスにより内分泌系に影響が出るとホルモンバランスが乱れ、エストロゲンが不足して抜け毛が助長されることも考えられます。
さらに、ストレスがかかると腎臓のそばにある副腎の副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。慢性的なストレスによりコルチゾールが過剰分泌されると免疫機能が抑制され頭皮環境が悪化し、抜け毛を引き起こす可能性があります。このようにストレスは間接的に抜け毛を引き起こす原因となり得るのです。
AGA発症には主に男性ホルモンの作用が関係しており、ストレスはAGAとの直接的な因果関係は認められていません。しかし、先に述べたようなストレスによる身体への影響によりAGAによる抜け毛や薄毛が助長される可能性があります。ストレスの他にも、睡眠不足、運動不足、不摂生な食事などの生活習慣の乱れもAGAを悪化させる可能性があると考えられています。
AGA発症にはストレスや睡眠不足などとの関係性も伺えますが、主に男性ホルモンが関係しています。またAGAによる薄毛には髪の毛の持つ「ヘアサイクル」が大きく関わっています。
ヘアサイクルとは髪の毛が成長する周期のことで、髪の毛が成長する「成長期」、成長が止まり毛包が退縮していく「退行期」、毛包の活動が休止する「休止期」の大きく3つの段階から構成されています。ヘアサイクルは通常1000日から2000日で1周しますが、AGAを発症すると髪の毛の成長期が最短で100日ほどに短縮されてしまいます。
AGAによりヘアサイクルが短縮されると髪の毛が成長する期間も短くなり、十分に育ちきらない髪の毛が増え、細く短い髪の毛が増加するために薄毛が進行していくと考えられています。
また、ヘアサイクルは毛根ごとに生涯繰り返される回数に限りがあり、ヘアサイクルを終えた毛根からは髪の毛が生えてこなくなります。AGAによりヘアサイクルの回転が早くなれば、早い段階で髪の毛が生えてこなくなってしまいます。
ヘアサイクルの短縮を招くきっかけとなるのが男性ホルモンです。男性ホルモンの一種である「テストステロン」は男性らしい身体づくりや生殖器の機能を維持するために欠かせないホルモンの一つです。
しかし、テストステロンが体内に存在する還元酵素「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」と結合すると「DHT(ジヒドロテストステロン)」という男性ホルモンに変化します。DHTが男性ホルモンの受容体である「アンドロゲンレセプター」と結合すると、体毛に対しては毛を太くするよう作用しますが、前頭部や頭頂部の髪の毛においてはヘアサイクルを短縮するよう作用し、AGAによる薄毛を進行させてしまうと考えられています。
AGAは進行性の脱毛症であるため、何かしらの対策を行わない限り症状は進行していきます。ここからは日常生活の中ですぐに実践できる対策からクリニックで行える対策までご紹介します。
現代社会の生活の中でストレスを感じないようにしたり、全く溜めないようにしたりするのは難しいことかもしれません。そのためストレスを感じてもうまく対処できるように、自分なりのストレス発散方法を持つことが大切です。
また、自分がどういう時にストレスを感じやすいのかを事前に知っていれば回避しやすくなるかもしれません。気分が落ち込む、集中できない、下痢や胃痛が起こる、不眠になる、故意に人付き合いを避けたくなるなどの状況はストレスを感じているサインかもしれません。少しでも心や身体の不調を感じた際は息抜きの時間を持ってみてください。
現在は食生活も多様化しており、外食やコンビニ飯などを利用する方も多くなっています。外食等は手軽に済ませることができるメリットがありますが、意識しないと栄養が偏りがちになる可能性も。
髪の毛の健やかな成長を促すためにはバランスの良い食事の摂取が欠かせません。ご飯やパンなどの主食、肉や魚などの主菜、野菜などの副菜がそろった食事を摂取するよう心がけましょう。
質の良い十分な睡眠をとることが髪の毛に良いとされる理由には、成長ホルモンの働きが関係しています。成長ホルモンは、子どもの頃は骨や筋肉などを発達させるよう働きますが、大人になるとタンパク質合成や細胞増殖、代謝の促進などの役割を持つようになります。
成長ホルモンは入眠後3時間ごろのノンレム睡眠時に多く分泌されると考えられているため、最低でも3時間以上は睡眠をとることをおすすめします。理想的な睡眠時間は6時間以上8時間未満とされていますが、睡眠時間は人によって必要な時間が異なるため、自分に合った睡眠時間を確保するのが理想といえます。
少しでもスムーズに入眠するためには、睡眠を妨げるカフェインやニコチンの摂取を控えたり、入眠前にぬるめの温度で入浴したりするなどの方法がおすすめです。
ドラッグストア等で気軽に購入できる発毛剤と育毛剤。薄毛に悩む方なら一度は使用を検討したことがあるかもしれません。発毛剤には「ミノキシジル」という発毛効果を持つ成分が含まれているため、毛乳頭細胞を活性化させ、髪の毛を生やす効果が期待できます。一方で育毛剤には発毛効果はありませんが、頭皮環境を整え薄毛を予防する効果は期待できます。
ただし、発毛剤や育毛剤はあくまで頭皮ケアのサポート的役割を果たすものであり、使用したからといって必ずしも薄毛が改善されるものではありません。使用することで髪の毛のハリやコシが改善を感じるようであれば使用を続けてもよいでしょう。もし一定期間使用を続けていても改善が感じられない場合はクリニックを受診するなど、他の対策を行うことをおすすめします。
AGAによる薄毛が進行している場合、また前述の対策法で改善しない方は薄毛治療専門クリニックの受診を検討されることをおすすめします。AGAは進行性の脱毛症であり、専門的な治療を行わない限り進行を止めることは難しい脱毛症です。
薄毛の進行具合にもよりますが、現在は投薬治療が主流であり外用薬や内服薬のみで治療を行うことも可能です。また薄毛に特化したクリニックであれば知識も豊富であり、薄毛の悩みに強いといえます。クリニックを選ぶ際は費用面のみで選ぶのではなく、実績豊富なクリニックを選ぶとよいでしょう。
AGA治療法として主流なのはフィナステリドやデュタステリドなどを用いる投薬治療ですが、他にも植毛術やメソセラピーなどいくつか治療方法があります。
AGA治療に用いられる治療薬として代表的なのは「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」の3種類です。フィナステリドとデュタステリドは、5αリダクターゼの働きを抑制してAGAの進行を防ぐ働きが、ミノキシジルは発毛を促す働きが期待できる治療薬です。
またフィナステリドとデュタステリドは内服薬のみ、ミノキシジルは内服薬と外用薬の2種類があり、薄毛の進行具合に合わせた処方が行われます。AGA治療の多くは、AGA自体の進行を防ぐフィナステリドまたはデュタステリドと、発毛を促すミノキシジルの2種類を併用し治療を行っていきます。
薄毛の外科的治療としてよく知られているのが「植毛術」です。植毛術には自らの毛根を移植する「自毛植毛」と、ナイロンやポリエステルなどで作られた人工毛を移植する「人工毛植毛」の2種類があります。
人工毛植毛は自毛植毛と比較して費用を抑えられますが、安全性の面ではリスクが高く「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」(以下、ガイドライン)でも施術が推奨されていません。一方、自毛植毛は生着率も高くガイドラインにおいても5段階の推奨度のうち、上から2番目の“推奨度B”に位置付けられており、有用性が認められています。
メソセラピーとHARG療法はともに皮下注射で有効成分を注入し薄毛を改善する治療法です。メソセラピーはクリニックごとに有効成分の配合が異なりますが、HARG療法の場合は日本医療毛髪再生研究会によって配合成分が決められているのが特徴です。
ストレスとAGAの直接的な因果関係は認められていませんが、ストレスは薄毛を助長させる要因となる可能性があります。薄毛の原因がAGAであるとは限りませんが、もしAGAである場合は進行性の脱毛症であるため早めの治療が大切です。
実績と治療経験が豊富な医師が在籍しているAGAヘアクリニックでは、患者様お一人おひとりのお悩みに沿った治療法をご提案させていただいております。完全個室の診察室を採用しており、他のお客様と顔を合わせることなく治療を行っていただけます。薄毛のお悩みはぜひ一度、当院までご相談ください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。