生活習慣と予防
「薄毛」といえば、おでこや頭のてっぺんがはげてしまう、また髪の毛全体がスカスカになってしまう現象を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし同じ薄毛でも、うなじ部分の抜け毛が増えてしまう「うなじはげ」に悩む方も稀にいらっしゃいます。
うなじは体の背面にあるため、自分ではなかなか変化に気付きにくい場所です。そのため、うなじはげに気付いたときには薄毛がかなり進行していたということもあります。ではなぜ、知らぬ間にうなじが薄毛になってしまうのでしょうか。今回のAGAタイムスでは、うなじはげの原因と対策について解説します。

今回の記事では話の流れを分かりやすくするため「うなじはげ」と表しますが、本来「うなじ(項)」とは首の後ろの髪の毛が生えていない部分のことを指します。この首の後ろの生え際がはげることで「うなじがはげた」と悩む方もいるようですが、正確には「襟足(えりあし)」の髪の毛が抜けていることになります。
抜け毛や薄毛に悩む男性に多く見られる「男性型脱毛症(AGA)」は、“頭頂部が薄毛になりやすい”“おでこがM字型にはげあがる”など、症状にパターンがあります。しかし、うなじ周辺がはげてしまう抜け毛に関しては、様々な疾患が原因で生じることがあるため、診断が困難なことがあります。そのため、うなじの真ん中あたりから抜け毛が起こるケースや左右どちらかのうなじ部分に抜け毛が起こるケース、うなじ周辺に円形の抜け毛が起こるケースなど、症状にも個人差が考えられます。
前述の通り、うなじはげは診断がむずかしいこともありますが、原因として考えられる疾患や状態が複数存在します。この章では、それぞれの原因についてくわしく紹介していきます。
円形脱毛症とは主に丸く円状に毛髪が抜けてしまう後天性の脱毛症です。一般的には髪の毛が10円玉ほどの大きさの範囲で脱毛する症状が想像されますが、複数の脱毛斑を認めたり、大きな脱毛斑で発症したり、脱毛範囲が全身に及ぶなどさまざまなパターンが存在します。年齢や性別を問わず、誰にでも発症する可能性があるとされる脱毛症ですが、明確な原因はまだ解明されていません。現状では日本皮膚科学会が定める「円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも、推奨度A(行うよう強く勧める)の治療法が存在しない疾患です。
また円形脱毛症は、単発型、多発型、蛇行型、全頭型、汎発型の5つに分類されています。

中でも、うなじ部分のみはげてしまう原因として考えられるのは「単発型」、「多発型」、「蛇行型」の円形脱毛症です。蛇行型の円形脱毛症は、主に側頭部や後頭部に見られる脱毛症状といわれており、脱毛斑が結合していびつな形で広がっていくのが特徴です。
また自己免疫疾患である「膠原病」や「甲状腺疾患」を発症した場合に円形脱毛症を合併することがあるといわれています。
頭皮環境が悪化してしまう主な原因は以下の通りです。

注1:毛髪を作り出す細胞
注2:毛母細胞を生み出す幹細胞
牽引性脱毛症は髪の毛を結んだりエクステをつけたりなど、髪の毛を長時間同じ方向に引っ張り続けることで毛根や頭皮に負荷がかかり、抜け毛に繋がってしまう脱毛症です。長い時間、負担を受け続けた頭皮は血行不良を引き起こす可能性があります。頭皮の血行が悪くなると髪の毛の成長に必要な栄養や酸素が頭皮の毛細血管にまで行き渡らず、育毛が滞ったり抜け毛を助長する恐れがあると考えられます。
牽引性脱毛症を発症しやすい髪型には、ポニーテールやお団子などのように髪の毛を強く引っ張って留めるような髪型が挙げられます。うなじ(襟足)は後頭部の下部にあるため、髪型によって様々な負荷がかかることが予想されます。そのため、牽引性脱毛症がうなじ周辺に現れてしまった場合には、うなじはげが起こる可能性があります。
抜毛症とは一種の癖のようなもので、“髪の毛が抜けてしまう”脱毛症とは異なり、自分自身で“髪の毛を抜いてしまう”ために脱毛状態になる症状です。抜毛症の好発年齢は思春期前後が多く、患者の約90%は女性です。頭皮や髪の毛に異常がある症状ではないため、抜毛行為を止めれば髪の毛は生えてきます。
抜毛症は利き手側の頭髪を抜いてしまうことが多く、眉毛などの体毛を抜いてしまうこともあります。抜毛部分は切れた毛が不規則に残ったり頭皮が損傷して赤くなったりし、脱毛部の形は綺麗な円というよりもいびつな形をしているのが特徴です。
瘢痕性脱毛症は火傷や怪我などの外的要因によって毛包が破壊され、抜け毛が起こる脱毛症の一種です。瘢痕化が起こった箇所は毛包が消失しているため、そこから髪の毛が再生することはありません。また瘢痕性脱毛症は怪我などの外的要因だけでなく、病気などの内的要因が引き金となり毛包が破壊されて生じることもあります。
火傷や怪我などの外傷はいつ、どこに起こるのか予測ができないため、うなじ周辺に起こることも考えられます。また病気による毛包の消失も起こるタイミングや箇所は予測ができず、突如うなじ周辺に抜け毛が起こる可能性もあります。このようにさまざまな外的要因や内的要因によりうなじ周辺の毛包が消失してしまった場合には、うなじ部分がはげてしまう恐れがあります。
生活習慣や頭皮環境の悪化が原因となっている場合など、原因が明確なうなじはげであれば、意識して生活を見直せば抜け毛が改善できる可能性があります。しかし、自己判断で誤った対処をすると薄毛の症状が悪化することも考えられます。そのような事態を避けるためにも、まず病院で診察を受け原因を特定する必要があります。医師による判断のもと適切な治療を受けながら、自身でも対処法を生活に取り入れることが改善への近道といえるでしょう。
続いては、今日からでもすぐに実践できる対処法について紹介していきます。円形脱毛症のように原因が解明されておらず確立した治療法が存在しない疾患、また抜毛症のように改善に時間を要することが多い疾患、瘢痕性脱毛症のように治療が不可能な疾患が原因である場合でも、これ以上うなじの抜け毛がひどくならないための対策になるので、ぜひ積極的に取り入れてみてください。
ストレスの蓄積は自律神経の乱れや血行不良、免疫力低下、ホルモンバランスの乱れなどを引き起こしやすくするといわれているため、さまざまな抜け毛や薄毛の症状を助長する可能性があります。
ストレスの感じ方や生活環境には個人差があるため根本的な原因の解決はむずかしいかもしれませんが、定期的にストレスを発散する機会を設け、ストレスをためないことを意識しましょう。音楽鑑賞やスポーツ、カラオケ、買い物、旅行など、趣味に没頭できる時間を確保したり、アロマテラピーやマッサージなど、リラックスやリフレッシュ効果があるとされる方法を取り入れてみましょう。自分に適した方法を見つけ、ストレスを上手く解消していけるとよいでしょう。
◆タンパク質を含む食材◆
鶏ムネ肉、豚ロース肉、牛モモ肉、鮭、マグロ(赤身)、卵、大豆 など
◆ビタミン類を豊富に含む食材◆
【ビタミンC】赤ピーマン、キウイ、ケール など
【ビタミンE】アーモンド、カツオ、イワシ、しいたけ など
【ビタミンB群】豚肉(B1)、うなぎ(B2)、マグロ(B6)、牡蠣(B12) など

運動不足の方がいきなり運動を習慣化するのは難しいかもしれませんが、軽いウォーキングやラジオ体操などを行うだけでも、体に良い影響を与える「有酸素運動」になるといわれています。
日頃から体を動かす機会の少ない方は、まずは近所への散歩やラジオ体操などからはじめてみて、慣れてきたら少し距離を伸ばして本格的にウォーキングを行う、サイクリングやエアロビクス、水泳など長時間動くのに適した有酸素運動を取り入れていくとよいでしょう。
自分に合うシャンプーを選ぶことや正しい方法でシャンプーを行うことは、健康な頭皮環境の維持には重要です。そのため頭皮環境の悪化によってうなじがはげてしまった場合には、シャンプー選びやシャンプー方法を見直してみましょう。
先述の通り、ヘアカラーやブリーチ、パーマなどの薬剤が間接的にうなじはげを招く可能性が考えられます。したがって、少しでもリスクを避けるためにはそれらの施術頻度は抑えたほうがよいでしょう。
頭皮に優しいアミノ酸系シャンプーを使用するなど、日ごろから少しでも頭皮環境を良い状態に保つ工夫をしておくことも重要です。
また、市販のカラー剤などを使用してセルフケアを行う方も少なくないでしょう。コスト面や手軽さを考慮すると決して悪いことではありませんが、自分で行うと手の届きづらい部分や見えづらい部分があるため、うなじや地肌に薬剤を付着させてしまったり洗い残しが生じたりするリスクが高まります。うなじはげの予防を第一に考えるのであれば、きちんとプロである美容師に施術してもらうようにしましょう。
紫外線によるダメージから頭皮を守るには「紫外線に当たらないこと」が一番の対策といえます。とくに紫外線量が多いとされる10〜14時の間はなるべく直射日光を避け、紫外線を浴びないよう注意する必要があります。しかし日常生活を送る中では日中の外出が避けられない場合もあります。そこで日ごろから紫外線を避けるための対策を取り入れておくことをおすすめします。
頭皮に降り注ぐ紫外線を防御するには、帽子の着用や日傘の使用が有用です。紫外線を含む太陽光が直接頭皮に当たらないようにすることが最も重要なので、帽子を持ち合わせていない場合はタオルなどで頭部を覆うことも効果的でしょう。また日焼け止めを用いることも紫外線の防御には有効とされています。しかし頭皮に均一に日焼け止めを塗布することは難しいため、スプレータイプの日焼け止めや飲む日焼け止めを用いるなど、生活スタイルに合わせて対策してください。
先述の通り、襟足の髪の毛を引っ張りすぎると牽引性脱毛症を引き起こしてうなじはげを招いてしまう可能性があります。このようなリスクをなるべく避けるためには、定期的なヘアスタイルチェンジがおすすめです。
牽引性脱毛症を避けるためにも、きっちりと髪の毛を結わきあげるアップスタイルはなるべく控え、襟足の髪の毛に負担をかけにくいダウンスタイルなどを取り入れるよいでしょう。
抜毛症の治療に関しては、症状への気づき訓練や抜毛衝動を誘発する原因からの回避(刺激統制)、抜毛の代わりに用いる行動の習慣化(競合反応訓練)など、人それぞれの具体的な症状に合わせた「認知行動療法」が主に用いられます。うなじの薄毛が抜毛症によるものである場合は、上記のようにご自身で行える対処法を取り入れつつ、認知行動療法のような治療を併用することがよいでしょう。
また、瘢痕性脱毛症に関しては毛包が消失してしまう不可逆的な脱毛症なので再び髪の毛を生やしたい場合は植毛などの治療が必要になります。ただし、そのような外科手術を行う場合は瘢痕性脱毛症は活動性がなくなってから2年以上時間をおく必要があります。
うなじの抜け毛は原因となる疾患が多岐にわたり、治療しても症状の回復に時間がかかる可能性もあるので早めに医師の診察を受ける必要があります。できるだけ早いうちに原因を特定し、早期に適切な治療を始めることが重要です。
AGAヘアクリニックであれば、皮膚炎や膠原病などほかの疾患を併発していなければ「AGA」以外の方にも発毛剤などの治療薬を処方できます。万が一、当院では治療を施せない症状の場合は他の病院をご紹介させていただきます。当院の診察は何回でも無料なので、うなじの薄毛・抜け毛などの症状が気になる場合はお気軽に相談しにいらしてください。
医師監修のもと、AGA治療の基礎知識や
薄毛対策に関するトピックをお届けします。