円形脱毛症とは?原因や種類、治療法まで詳しく解説

円形脱毛症の特徴

円形脱毛症とは頭部に円形やまだら状の脱毛斑ができる後天性の脱毛症です。円形脱毛症による脱毛斑の大きさは一般的に10円玉ほどの大きさが想像されますが、頭髪だけではなく眉毛や体毛といった箇所に発生したり、重症化すると頭部全体に及んだりする場合もあります。

円形脱毛症の特徴

円形脱毛症の原因

一般的に「ストレスが主な原因である」と思われてきた円形脱毛症ですが、昨今その認識が誤りであると考えられています。円形脱毛症を発症する確固たる原因はまだ完全には解明されていませんが、現代の医学では自己免疫機能の異常が主な原因であることが分かっています。そのためアトピー性皮膚炎との関連性や遺伝的素因も関与が認められております。

自己免疫疾患
円形脱毛症の有力な原因として考えられているのが毛包組織に対する自己免疫機序です。何らかの理由により免疫機能が異常をきたし、髪の毛の生成に重要な毛包の正常な組織まで攻撃してしまうことがあると考えられています。
免疫機能が異常をきたす要因は明確にはわかっていませんが、疲労や感染症などの肉体的ストレスや精神的ストレスが引き金となる可能性が示唆されており、実際には確固たる誘因がないことも多いとされています。
心的ストレス
昔から円形脱毛症の原因はストレスによるものという説がありますが、医学的な根拠に乏しく、乳幼児でも発症しうる疾患であることから、現在ではストレス原因説には否定的な見解が多くなってきています。しかしストレスをトリガーとして免疫機能異常が生じる可能性も考えられるため、ストレスと円形脱毛症は全く無関係であるとも言い切れません。
遺伝
円形脱毛症と遺伝の関係についてもまだ解明されていない部分が多くありますが、一親等内(親・子)に円形脱毛症を発症した家族歴がある場合、発症率は約10倍であるとされています。また一卵性双生児の場合は両者が円形脱毛症を発症した際、症状の一致率が55%ほどであるのに対し、二卵性双生児では0%という報告もあるため、円形脱毛症が何らかの遺伝的要因を持つ可能性は高いと考えられています。
アトピー性疾患
円形脱毛症患者のうち、約4割が皮膚炎や鼻炎などになりやすいアトピー素因を持っているという報告があります。そのためアトピー素因が何らかの形で関与している可能性が示唆されています。ただし、円形脱毛症の発症にアトピー素因がどのように関わっているのかについての検討はまだ十分になされていません。

円形脱毛症とAGAの違い

円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は発症の原因だけでなく、発症対象や脱毛の状態にも明らかな違いがあります。

円形脱毛症は女性や子供も発症する

男性ホルモンが主な要因とされているAGAという脱毛症は、成人男性に発症します。AGAは思春期以降に発症する可能性がある疾患であり、年齢が上がるとともに発症率も上がることが知られています。

一方で円形脱毛症は自己免疫疾患などが原因とされているため、男性だけでなく女性や子どもなど全年齢層に出現します。

円形脱毛症は薄毛ではなく脱毛する

AGAの場合は髪の毛の生え変わる周期(ヘアサイクル)によって抜け毛が発生するため、抜け落ちる前に髪の毛が細く弱っていったり(軟毛化)、少しずつ抜けていったりと、髪の毛が急にごっそりと抜け落ちるということはありません。

しかし円形脱毛症の場合は髪の毛が抜け落ちる際に軟毛化するなどの予兆はなく、急に髪の毛が円形や楕円形に抜け落ちて頭皮が露出してしまうという特徴があります。

また、円形脱毛症は自覚症状はないことも多いですが、脱毛前や発症時に軽いかゆみや淡い紅斑が現れる場合もあります。また爪に小さな点状の凹みなどの変化がみられることもあります。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症は頭部の場合、脱毛斑の数や範囲、形態によって以下の5種類に分類されます。

通常型:単発型
脱毛斑が単発の場合、単発型に分類されます。頭部に一箇所だけ脱毛斑が発生した状態で、最も多いタイプといえます。
通常型:多発型
頭部に複数の脱毛斑を認める場合は多発型です。単発型から多発型に移行することがあります。
全頭型
脱毛巣が全頭部に拡大した状態を全頭型といいます。はじめは少数の脱毛斑であっても全頭型に移行する場合があり、その場合の回復率は10%以下と考えられています。
汎発型
汎発型は頭部だけでなく眉毛やまつ毛など全身の毛髪に影響を及ぼし、脱毛が全身に拡大します。全頭型と同様に難治性のタイプです。
蛇行型
円形の脱毛斑ではなく、頭髪の生え際が帯状に脱毛するものを蛇行型といいます。主に側頭部や後頭部に見られ、脱毛斑が結合していびつな形で広がっていきます。
円形脱毛症の種類

円形脱毛症の治療法

現在、推奨されている円形脱毛症の治療法は主に4つあります。

局所免疫療法

局所免疫療法は、かぶれを引き起こす物質(SADBE、DPCPなど)を皮膚に塗布して発毛を促す治療法です。脱毛が広範囲に渡る多発型や全頭型に対し、年齢を問わず使用が推奨されています。しかし汎発型や甲状腺疾患を伴う場合では効果が乏しいとされており、頭痛や倦怠感、じんましん、色素沈着などの副作用も懸念されています。さらにアトピー性皮膚炎を併発している場合は、症状が悪化する恐れもあるため注意が必要です。また円形脱毛症に対するSADBEやDPCPの治療は保険が適用されません。施術頻度は週1回〜月1回程度まで、治療の経過を診ながら調整されます。

ステロイドの局所注射

ステロイド局所注射療法は、ステロイド薬剤を真皮下層から皮下脂肪層に直接注射する治療法で、比較的症状の軽い単発型や多発型の治療に用いられます。ただし、ステロイド局所注射によって発毛効果が得られたという報告はありません。しかしステロイド局所注射をした部位はプラセボ(偽薬)と比較して発毛の評価指標が改善されたとの報告や、ステロイド局所注射が円形脱毛症の単発型と多発型の双方に有効であるという研究報告は存在します。したがって、ステロイド局所注射は円形脱毛症の改善を促すことが示唆されており、軽度の成人症例に推奨されています。投与は1カ月に1回程度で済み、通院時にその場で施術できるため比較的安全性の高い治療といわれています。

ステロイド外用療法

ステロイド外用療法は、ステロイド剤を頭皮に直接塗布する治療法で、1日1〜2回患部に塗布します。比較的軽度の単発型、多発型に用いられますが、最近の報告では中症程度の円形脱毛症にも効果が認められたとされています。しかし全頭型や汎発型患者に行なった研究では、一時的には症状が回復したものの、一部の患者は症状が再発し治療前の状態に戻ったという報告があり、重症度の高いレベルでは推奨されていません。

かつらの使用

かつらの使用は円形脱毛症の病勢に直接影響する治療法ではありませんが、紫外線や外傷から頭部を守ったり、心理的サポートによりQOL(※4)が向上したりする面では有用だとされています。現在、海外では病的脱毛症に対するかつらが医療用具として扱われ健康保険の対象となっている国もありますが、日本国内では保険対象外です。

※4 生活の質、満足度。

円形脱毛症とAGA治療薬

AGA(男性型脱毛症)の治療に用いられる発毛剤「ミノキシジル」は、円形脱毛症に対する効果としては十分に実証されていません。これは、円形脱毛症は自己免疫の異常が主な原因であると考えられているのに対し、AGAは主に男性ホルモンに起因する脱毛症であり、円形脱毛症とAGAの根本の原因が異なることが影響しているといえるでしょう。

しかし、少ない症例ではあるものの、国内でもミノキシジルによって円形脱毛症の改善が見られたとの報告があるため、単発型および多発型の症例に併用療法のひとつとして行なってもよいとされています。

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当院にも「円形脱毛症を改善する治療薬が欲しい」といった患者様がご来院することがあります。中には「AGAだと思っていたが円形脱毛症だった」という患者様もいらっしゃいます。円形脱毛症の脱毛斑がミノキシジルで発毛する場合もありますが、より適切な治療を行うためにも、AGAでなかった場合は症状に合った病院をご紹介させていただいております。まずはお気軽にご相談ください。

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